株式会社楽居の本店 An・Jour アン・ジューについて


「安住」の意をこめて名付けたコンセプトハウスAn・Jour

鎌倉の七里ガ浜にある楽居のコンセプトハウスAn・Jour。An(一つの)Jour(住まい)「一つだけの家」を表します。名には「安住」の意をこめました。

お打ち合せの時間も、お客さまに快適に過ごしていただけるように、楽居の家づくりのコンセプトを随所に盛り込んでいます。

新居での生活のイメージをあれこれ膨らませる場としてお役立てください。

鎌倉の七里ガ浜にあるコンセプトハウス アン・ジューの外観

将来へのベクトルに基づいた今を生きる家づくり

楽居の「伝統構法の家作り」というコンセプトは、決して伝統建築を忠実に再現するという「過去へのベクトル」ではなく、現代をより豊かに暮らすという「将来へのベクトル」に基づいています。

古き良き伝統の知恵を活かすということは、懐古的なノスタルジーではなく、あくまで現代社会の世相の中に身をおいた「今を生きる」ためのものでなくてはならないと考えています。

「守・破・離」と云われる職人仕事の道に従い、良き技を守りつつも、様式や価値観といった古い時代の壁を超えたところに「、今この時代にあるべき最適解」を再構築することが、私たちのなすべき仕事です。

女性ならではの繊細さや美意識を組み入れた場所

現代には「純和風」に限らない多様な美意識が浸透しています。「木の家」から「和風」を連想させる縛りを開放することが、An・Jourの大きな目的のひとつです。

女性も社会の表舞台で活躍する時代、建築も今や男手だけで完結する世界ではありません。伝統構法の家の容姿も力強く無骨な男性的家屋とは限りません。An・Jourは、住まい手(特に奥様方)の希望やイマジネーションを引き出して対話するきっかけとなるように、女性ならではの繊細さや美意識を組み入れた家づくりを念頭に進めました。

また、天然乾燥の国産木材をふんだんに使用しているからこその艶や香り、月日の経過とともに味わいを増す土壁や漆喰壁の表情など、自然素材の家の空気感を体感していただければと思います。コンセプトハウス内には、オリジナルの家具やプロデュース家具なども多く配置しています。

将来へのベクトルに基づいた今を生きる家づくり
将来へのベクトルに基づいた今を生きる家づくり
容姿と佇まい
容姿と佇まい
容姿と佇まい

1. 外観は高さを抑えて、軒を深く出すことで、見ていて穏やかな安心感が生まれるようなシルエットにしました。ここに帰ってくるたびに、ほっと気持ちが落ち着くような毎日を思い描きました。

2. 外壁の杉板張り(やまと張り)は伝統技術ですが、これは純和風テイストに限らずマッチングする質感を持つ自由度の高い素材のひとつです。ウッドロングエコ塗装を施しています。

3. 屋根には天然スレート石を張り、景観の一部として道行く人々からも見える勾配をとっています。ヨーロッパの古い街並みからの着想です。石材なので耐久性も非常に高く、メンテナンスを前提とする板金塗装の屋根とは根本から発想が異なる素材選択です。

容姿と佇まい

4. 洋の東西を問わず、田舎町の景色が美しいと感じるのは、ひとつひとつの家が、自然が作るランドスケープのピースとして馴染んでいるからこそと言われます。工業製品を貼ることではどうしても出せない質感の積み重ねが美しい景観を構成しています。

容姿と佇まい

5. 道路と敷地を塀や植栽で分断しないオープン外構で、建物を隠さずに街並みに調和させるつながりを工夫しました。庭に面したデッキは細い縦格子でプライバシーを守りつつ、繊細な線でつくる面を建物外観のアクセントにしています。ここには扉がありますが、扉の機能的な顔が独立して主張しないように格子のデザインを連続させて、すっきりシンプルな面にしています。

6. 門扉やポストは、せっかくなので馴染みのアイアン工房にお任せで家に合わせたデザインを起こしてもらいました。

容姿と佇まい
容姿と佇まい

7. 庭は、純和風庭園やフランスの王宮庭園のような端正な剪定作業でつくり込まれた景観ではなく、どちらかというと英国風ガーデニングのような自然な植生の姿を生活にとりいれるイメージでつくりました。とはいえ、何風という様式にとらわれすぎないよう、自然な雰囲気で石の隙間から緑が茂るようなイメージだけを念頭に置きつつ、いろいろな要素を自由にアレンジして独特の「An・Jourらしさ」を追求することを心がけました。庭とつながる駐車スペースの土間仕上げにも、日本の石材とモザイク状の石材を組み合わせて和洋折衷を採り入れています。植栽選びは人間中心ではなく植物中心で適材適所に配するのが手間に追われないコツです。小さな庭の中でも木陰や置石付近など、日当たりと土中の水分のコンディションはほんの少し離れたところでも全然違ったりします。元気があったりなかったり、庭を眺めていると、ただきれいというだけでなくいくつも違った発見があります。うまく根付いた草木が季節が変わるごとに順番に花が咲かせたりするようになると嬉しいものです。

容姿と佇まい

格子から外にもれる光が美しい表情になります。帰宅を迎える夜の顔です。

暮らしのシーン
暮らしのシーン

全体が見通せるオープンなつくりで、風が東西南北に流れます。「廊下と扉」で仕切る構成にとらわれず、入口側がパブリックゾーン、奥にいくほどプライベート感が増していくように各室をレイアウトしています。

暮らしのシーン

料理をする、洗濯をする、干す。主婦(主夫)は生活の主役。毎日の家事がおっくうにならないように、家事動線を家の中心にまとめて「回遊」できるようにしました。

玄関

玄関
玄関

1. 玄関からリビングまで続く「通り土間」は、楽しくラフに使えます。ただの通路としてではなく、幅をもたせてストーブや植物を置けるようにしました。床はタイル貼り。ワックスを塗ると古びた石の味が出せます。

2. 玄関からリビングにかけて一直線の壁は板を横方向に張っています。自慢の奥行きをさらに引き立たせる視覚効果が得られます。杉板には白塗装の上にブラウンのWAX塗装をかけ、さらにワイヤーブラシで削って仕上げています。古材の表情になりました。(計画当初は白い壁の予定でしたが、ちょっとイメージが違ったので)

キッチン

キッチン
キッチン

1. 床と壁は、シミができず手入れがしやすいタイル貼りに。この壁のタイルは自然な斑が入っていて、最近一番のオススメです。

2. 扉からキャビネットの中まで無垢の木を使ったオーダーキッチンは楽居オリジナル。便利機能も重視しています。L字コーナー部分には、くるくるまわるキャビネットや、ドイツ職人気質の信頼できる食洗機(GAGGENAU製)をいれています。

3. キッチンとリビング天井の一部には壁紙を使用。実は普段あまり目につかないところです。予算を抑える一例としてご参考いただければと思います。

ダイニング

ダイニング

1. 床は、椅子を引いても傷がつきにくく、ついた傷も変に目立たず使い込んだ味となるように、硬質で端正になりすぎない広葉樹(オーク)を選びました。椅子は、あえて揃えずに1点1点バラバラに気に入ったものを置いています。ちぐはぐで野暮ったくならないためには、アイアンのシンプルな椅子を合わせるとうまくいきます。

2. 家具は古道具屋さんで見つけたキャビネット。たくさんの引出しがついていて、動きが悪かったりしますが、いい味を出しています。サンプルを入れたりして実用的に使っています。

ダイニング

リビング

リビング

1. 8畳のリビング。「小さめ」と思われるかも知れませんが、広すぎて間延びしない方が、実は適度に落ち着きやすいという一面があります。広がり感は「面」としてではなく、天井を吹き抜けにして、「空間」としての開放感を出しています。戸建てだからこそやりやすくなるバリエーションです。マンション建築で見るような「リビングは面積」という見方に一石を投じる構えです。

2. 階段はリビング内にあります。圧迫感なくリビングを飾るスリット階段。折れ曲がる階段を木で作る場合は支柱を入れる必要があったため、リビングを圧迫する要素を極力排するために鉄骨フレームを選びました。(たまに鉄骨の角に頭をぶつけることがあり、ここは反省点です。)

3. 塗装屋さんや基礎屋さんが捨てるはずだった足場板をきれいにして、階段の段板や窓上の棚などに有効活用しています。すでに自然に使い込まれているので、新材には出せない味が出しやすいです。

和室

和室

1. 1階の和室。小振りな3帖間で天井はやや高く。ここも落ち着く小空間です。

2. 3帖畳の両側には「床の間」というほどではない板の間をもうけて、ちいさな遊び心を置けるようにしています。最近は、ここに「季節の手ぬぐい」を飾って季節感を楽しんでいます。

3. 2階の和室。土壁と、一部に砂漆喰を塗ったところが見比べられるようになっています。楽居の基本構造「小屋組」を現す勾配天井の下には、高さを抑えたベッドを置いています。イメージは、旅館の眠りです。

ホール

ホール

2階のホールは、畳の間の前室ということもあり、床にはすっきりと端正な桧の材を使っています。建物全体で、硬さが異なる3種類の床板(杉、桧、オーク)の感触を比較できるようにしてあります。

デッキ

デッキ

1. 南の庭に面したデッキも、防犯とプライバシーを確保するために格子とルーバー戸で外部と切り離しています。さらに屋根を掛けて、あたかも室内の延長として使えるようにしました。

2. 道路からの視線を気にすることなく、お茶も食事も、お昼寝もできる。第二のリビング・ダイニングです。植物もたくさん置きました。中にいるようで外にいるような、すがすがしくリラックスできる場所です。雨の日には、デッキの屋根から流れる雨水の音がヒーリングミュージックのように聞こえてきます。

デッキ
デッキ

3. 北のデッキは家事動線の一部、洗濯物を干すスペースです。北側でも平屋部分で日差しが届くため、洗濯物が問題なく干せます。防犯とプライバシーの面から外部とは完全に切り離し、外からは入れないようになっています。囲いの板塀は、視線は遮り風のみを通す構造になっています。お隣の視線が気になることもありません。

4. 機能的には物干しスペースですが、植栽を配することで室内リビングから洗濯物は見えず、植物のみが絵のように見えます。

5. 最近ではハンモックも置いて、秘密のリラックススペースとなりつつあります。

ラバトリー・お風呂

ラバトリー・お風呂
ラバトリー・お風呂

トイレと手洗いは2カ所、それぞれ趣向を変えています。なお2台のトイレには、TOTOとLIXILそれぞれを入れてあります。デザインや使い心地(?)を比べてみてください。

1. パブリック側は、お客さんに落ち着いて入ってもらえるようにトーンを落とした色調。ポイントにモリスの壁紙をつかっています。手洗いシンクや水栓は、好みが分かれにくいシンプルなモダンデザインを選びました。

2. プライベート側は、普段使いの地味な場所を楽しくするために、明るくキラキラしたイメージにしました。シンクや水栓にも装飾的なデザインを選んでいます。

3. お手入れのしやすさとデザイン性を両立させてハーフバスに。くつろぎ空間の天井には桧を張っています。特に気を遣わなくても、普通に換気していればカビが生えないことを実際にご覧いただけます。

収納

4帖のウォークインクローゼット。洋服をかけるハンガーパイプは木製、中段には布団を置けます。杉の床板、土壁、杉の天井と、収納庫の調湿効果を最大限引き出せる仕様です。

収納

ライティング

照明は現代的なダウンライトから、西洋のアンティークのシャンデリア、フロアランプ、古道具屋さんでみつけた日本の昭和の裸電球など、様式を問わず気に入ったものを集めて生かしました。姿形だけでなく照明効果も考えて、一番しっくり溶け込むところに添えていきます。

ライティング
ビフォーアフター

An・Jourは、古家のリフォームから生まれました。オーナーの「一部でも残したい」というご希望から、古家の基礎を残し、建物のアウトラインは引継ぐ形で再構築しました。

ビフォーアフター
ビフォーアフター

プランニング開始当時の記録。An・Jourへの再構築はこんな風にスタートしました。

古屋の記憶
古屋の記憶

二匹の狛犬さま(?)とペリカンさま(?)。50年にわたり玄関アプローチに個性を湛えてきたシンボルは、今も変わらずそこに佇んでいます。

古屋の記憶

ぐるぐる模様のガラス板。このような意匠的なガラスは、本当に残念なことですが、現在のガラスメーカーでは生産されていません。文字通り「有難い」品です。古家の木建具にはめ込まれていたものを大事に磨いて再利用しています。